2037.01.01
初めましてはここから。
初めまして!そして、ようこそ「菫と 空と」へ!
ここは,まだまだ修行不足ですが小説をおいています。
どうぞ,ごゆるりと・・・・・・。
最新の記事は下の方にいけばあります。
完結済みの連載は,カテゴリからどうぞ。
最新の更新(7/28) Moon(久々に普通のショート・ストーリー)
連載
To you of the First Love.
【登場人物】
第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 第六話 第七話
『容姿良し・頭良し・性格良し』の三拍子が揃っているのに超がつくほどの硬派な主人公・梟と、眼鏡をかけた大人しい性格の礼儀正しい後輩・麒麟のピュアすぎる恋愛小説。
ひらがなで100のお題
001:あさをさがす
002:なみだいろのあめ
003:こわいゆめをみた
004:ふわり、ふわり
005:そらとあお
006:てをのばして
007:こもれび
008:それだけで、しあわせ
009:なついろ
010:おやすみ、またあした
011:ずっとすきでした
012:しずんでゆくゆうひ
013:いつもいっしょ
014:こわれるまで
015:ぎんいろのねこ
016:あしもとの
017:ただ、それだけ
018:さらえる
019:おぼえておいて
020:かいがらのあめ
021:なにかがたりない
022:つまびくゆび
023:おいかけて、おいかけて
024:ひとりきり
025:みているだけでよかった
026:つかめないかもしれないけれど
027:とりあげて
028:こどものころのゆめ
029:あめのにおい
030:からん、からん
031:あのころのわたし
032:ふりそそぐおもいをうけとめて
033:やくそく
034:きえてゆくぬくもりだけが
035:ひらり、ひらり
036:ねがいごと、ひとつ
037:とどけばいい
038:あかいはな
039:いつだってとどかないまま
040:まだ、
041:はかないいろ
042:たわむれ
043:にじむ
044:うしろすがた
045:もっていかれる
046:つるぎ
047:きんいろのあめ
048:ふきとばされてゆくおもい
049:しろいはな
050:ひびわれたうつわ
051:にせもの
052:あのそらのむこうまでとべたなら
053:かぜのような
054:ちぎれたくさり
055:うそ
056:それはむかしのおはなし
057:とおくとおく、どこまでもとおく
058:あるべきばしょ
059:きのうのこと
060:らせんのゆくえ
061:なにもいわないで
062:こわれたもの
063:いたずら
064:かがやかしいそら
065:かたん、
066:とおざかる
067:ねぇ、わらって
068:きみにあずけた
069:しろいつめ
070:あまやどり、あなたにかさを
071:いかなくちゃ
072:みてはいけない
073:あのひうめたもの
074:おとをかなでるゆび
075:みみをすまして
076:いつもいつも
077:あきらめたくなかった
078:こがれて
079:いらないもの
080:どこまでもつづく
081:きいてください
082:あわゆき
083:なみにさらわれる
084:ことのは
085:きみがいない
086:あめのいろをした
087:むすんで、ひらく
088:あなたとかくれんぼ
089:おいてかないで
090:えいえんのあしおと
091:てをのばさないでいて
092:きみをさらっていく
093:あかつきのせかい
094:そらのやいば
095:がらくたおきばの
096:まばゆいまでのまぼろし
097:よるのいたずら
098:ゆびさきでさらう
099:うつくしいけもの
100:さようなら、あいしたひと
お題配布元:追憶の苑さん
ここは,まだまだ修行不足ですが小説をおいています。
どうぞ,ごゆるりと・・・・・・。
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最新の更新(7/28) Moon(久々に普通のショート・ストーリー)
連載
To you of the First Love.
【登場人物】
第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 第六話 第七話
『容姿良し・頭良し・性格良し』の三拍子が揃っているのに超がつくほどの硬派な主人公・梟と、眼鏡をかけた大人しい性格の礼儀正しい後輩・麒麟のピュアすぎる恋愛小説。
ひらがなで100のお題
001:あさをさがす
002:なみだいろのあめ
003:こわいゆめをみた
004:ふわり、ふわり
005:そらとあお
006:てをのばして
007:こもれび
008:それだけで、しあわせ
009:なついろ
010:おやすみ、またあした
011:ずっとすきでした
012:しずんでゆくゆうひ
013:いつもいっしょ
014:こわれるまで
015:ぎんいろのねこ
016:あしもとの
017:ただ、それだけ
018:さらえる
019:おぼえておいて
020:かいがらのあめ
021:なにかがたりない
022:つまびくゆび
023:おいかけて、おいかけて
024:ひとりきり
025:みているだけでよかった
026:つかめないかもしれないけれど
027:とりあげて
028:こどものころのゆめ
029:あめのにおい
030:からん、からん
031:あのころのわたし
032:ふりそそぐおもいをうけとめて
033:やくそく
034:きえてゆくぬくもりだけが
035:ひらり、ひらり
036:ねがいごと、ひとつ
037:とどけばいい
038:あかいはな
039:いつだってとどかないまま
040:まだ、
041:はかないいろ
042:たわむれ
043:にじむ
044:うしろすがた
045:もっていかれる
046:つるぎ
047:きんいろのあめ
048:ふきとばされてゆくおもい
049:しろいはな
050:ひびわれたうつわ
051:にせもの
052:あのそらのむこうまでとべたなら
053:かぜのような
054:ちぎれたくさり
055:うそ
056:それはむかしのおはなし
057:とおくとおく、どこまでもとおく
058:あるべきばしょ
059:きのうのこと
060:らせんのゆくえ
061:なにもいわないで
062:こわれたもの
063:いたずら
064:かがやかしいそら
065:かたん、
066:とおざかる
067:ねぇ、わらって
068:きみにあずけた
069:しろいつめ
070:あまやどり、あなたにかさを
071:いかなくちゃ
072:みてはいけない
073:あのひうめたもの
074:おとをかなでるゆび
075:みみをすまして
076:いつもいつも
077:あきらめたくなかった
078:こがれて
079:いらないもの
080:どこまでもつづく
081:きいてください
082:あわゆき
083:なみにさらわれる
084:ことのは
085:きみがいない
086:あめのいろをした
087:むすんで、ひらく
088:あなたとかくれんぼ
089:おいてかないで
090:えいえんのあしおと
091:てをのばさないでいて
092:きみをさらっていく
093:あかつきのせかい
094:そらのやいば
095:がらくたおきばの
096:まばゆいまでのまぼろし
097:よるのいたずら
098:ゆびさきでさらう
099:うつくしいけもの
100:さようなら、あいしたひと
お題配布元:追憶の苑さん
2008.07.28
Moon
↓↓必読です!!↓↓
※初めに※
これは全くのフィクションであり,この中に登場する団体・人物・事件・及びその他諸々の事は現実のものとは全然関係ありません。なので,七夕なのにウサギ? とかいう野暮なことを言うのもNGです。おもっくそNGワードです。
そんで,この中に登場する全ては美弥の妄想の産物であり事実とは全く異なります。信じないで下さい。インターネットで検索をかけるのもやめてください。絶対出てきません。出てきたらそれは偶然です。パクッたわけじゃありませんからね。この元ネタを提供してくれたのは同級生の恐ろしく可愛い女の子ですからね。
このスペースを全く読んでいない感じの方がクレームを書かれても美弥は対処出来ませんので無視して削除しますから。読まれた上で,やっぱり文句がある,というかたのクレームはちゃんと受け付けます。そういう方はその旨を書いておいて下さると非常に助かります。消さないで済みます。
では,どぞー♪
※初めに※
これは全くのフィクションであり,この中に登場する団体・人物・事件・及びその他諸々の事は現実のものとは全然関係ありません。なので,七夕なのにウサギ? とかいう野暮なことを言うのもNGです。おもっくそNGワードです。
そんで,この中に登場する全ては美弥の妄想の産物であり事実とは全く異なります。信じないで下さい。インターネットで検索をかけるのもやめてください。絶対出てきません。出てきたらそれは偶然です。パクッたわけじゃありませんからね。この元ネタを提供してくれたのは同級生の恐ろしく可愛い女の子ですからね。
このスペースを全く読んでいない感じの方がクレームを書かれても美弥は対処出来ませんので無視して削除しますから。読まれた上で,やっぱり文句がある,というかたのクレームはちゃんと受け付けます。そういう方はその旨を書いておいて下さると非常に助かります。消さないで済みます。
では,どぞー♪
2008.07.02
To you of the First Love. 第七話
第七話
狼怜が転校してきて数日が経った、二月十日。
「ろーれいくーん・・・・・・死ぬぅ」
「オレもや・・・・・・」
登校早々ぐったりとした表情で倒れ込むように教室の机とご対面した二人は、ほぼ同じタイミングで溜め息を吐き出した。なぜこんなに二人が疲れていたのかというと、ここに来るまでに幾つもの甲高い声に囲まれたからである。
――それは、今朝の登校中に起こった。
「あっ、来た!!」
校門を通り抜けるなり梟と狼怜は、この学校の女の子全員じゃないんだろうかと思う程の沢山の女の子に捕まった。後輩も、同級生も、そして先輩もいる。その中から、同級生であろう女の子が梟の腕に自分の腕を絡ませ、身体からキツすぎる香水をプンプンさせながらすり寄ってきた。梟は、見たことがないのに妙に馴れ馴れしいその二人に、少し気圧された。
「冠深乃くーん! 十四日ってぇ、空いてるぅ?」
「え、い、いやその、うん、まぁ」
「じゃぁー、渡したいモノがあるからぁ、十四日の放課後に二年五組の教室来てくれるぅ?」
「あ、え?」
「あーっ、ミキティずるぅい! アタシも渡したいのにぃ!」
「じゃあアンタも同じ時に渡せばいーじゃーん。いいよね? 冠深乃くん、優しいし♪」
「え、まぁ、うん、別に大丈夫・・・・・・」
「ありがとぉ☆ じゃあ、またねぇww」
「あ、あぁ・・・・・・また・・・・・・」
漸く一つの関門を突破した梟だったが、また新たな女の子達に囲まれてしまう。梟は、果たして無事に教室まで辿り着くことが叶うのだろうかと、僅かながら不安を抱きはじめた。
去年までは少なくともこんなに迫られたことはなかった。精々、下駄箱の中に手紙が大量に入っていたりして、直接言いに来た子はほんの数人程度だったのだ。初めての出来事にどう対応していいかわからなくなり困り果てた梟は、慌てて狼怜を仰ぎ見た。だが、そこには梟と同じように女の子、しかも後輩に囲まれしどろもどろになっている狼怜がいた。
「あっ、やしろ“づ“かせんぱぁい♪先輩はぁ、十四日どうですかぁ?」
「いや空いてるっちゃあ、空いてるけど・・・・・・オレ、やしろ“づ”かやのうて、やしろ“つ”か・・・・・・」
「そーなんですかぁ? わぁ、いいこと知っちゃったぁっ☆」
「(別にいいことでもないけどな)
そーかいそーかい・・・・・・で十四日、オレはどこに行けばいいん?」
だが、ようやく調子が戻ってきたのか、狼怜は梟のようにおどおどとした対応ではなく、ちゃんとした口調で話している。
「それじゃぁ、一年三組の教室でいいですかぁ?」
「わかった。自分ら全員一年三組でええんか?」
「いいですぅ♪ じゃあ、待ってますねぇ☆」
「了解やで」
慣れているのか、ボディタッチもさりげなくかわしている狼怜を、梟は唖然として見つめた。てっきり、自分と同じようにテンパるものだと思いこんでいたからだ。だが、梟は肝心なことを忘れていた。彼が、かなりの軟派な人間だということを。
「まだ・・・・・・続くのか・・・・・・?」
硬派な梟には到底対処しきれない程、女の子達の迫り方は凄かった。さしもの狼怜も、最後の方にはぐったりしてしまっていた。
――と、いうわけなのである。
「あれ、冠深乃? と、社束くん。どしたの? 朝っぱらから、死にそうにして」
登校してきた杉村は、未だ机に伏せていた梟と狼怜に声を掛けた。あの日から杉村は、梟の良き女友達であり、そして良き恋の相談相手でもあった。梟は首だけ動かして、声がした方を見る。そして、声を掛けたのが杉村だとわかると、少し表情を和らげた。
「あ、杉村・・・・・・おはよー」
「うん、おはよう。で、なにがあったの?」
「聞いてくれよ、杉村ぁ。実はさぁ――――と、いうことがあったんだよ・・・・・・」
杉村は話を聞いた後、声を出して笑い出した。そして、
「なぁんだ、それでそんなに疲れ切ってたんだね。や〜、冠深乃の反応は面白いなぁ」
「そんな暢気なこと言うなよ〜・・・・・・こちとら、今日一日のエネルギー全部吸い取られた気がするんだってのに」
「ゴメンゴメン、笑いすぎたね。そっかぁ、バレンタインかぁ。もうそんな時期だね。で、どーすんの冠深乃。全部受け取りにいくつもり?」
笑いすぎて浮かんだ涙を拭いながら、杉村はそう聞いた。答えは大体見当がついていたが。
「当たり前じゃん・・・・・・約束は守らねぇと」
「ふーん・・・・・・じゃあその日、私も予約ね。最後でいいから、茶道室に来てくれる?」
「ああ、もうこうなったらどうにでもなれだ。十四日、茶道室だな?」
「うん、よろしく〜」
杉村はやけにスッキリしたような顔で、自分の席へと戻っていった。その直後、その机の周りに女の子が群がるのを二人は見逃さなかった。恐らく、何を話していたのか根掘り葉掘り聞かれているのだろう。が、杉村は意外にも場数を踏んでいて、のらりくらりと質問をかわすことだろうから、詳しく聞き出すことは無理に等しい。案の定笑いながら対応している杉村を見て、梟は苦笑を零した。そして、さきほどから首を捻っている狼怜に向き直る。それを見計らったかのように、狼怜が話しかけた。
「なぁ、梟。あの杉村って子も、お前のことが好きなんやろか・・・・・・? なんか、ちゃう気がするんやけどなぁ・・・・・・」
「そうか? よくわかんなかったけど・・・・・・」
「なんか、頼まれたって感じするんよなぁ」
「んなに気になるんなら、本人に直接聞きゃあいいじゃんよ。呼んでやるから」
そう言って梟は、ようやく質問攻めから解放され、仲のいい友達と話をしていた杉村を呼んだ。そして、狼怜を指差しながら言う。
「コイツがさ、さっきからお前が気になるってウゼーの」
「あら。もしかして惚れちゃった?」
「アホか。スマンかったな、お前はタイプやないんよ」
「それはお互い様ね。私もタイプじゃないの。で、なにが気になるって?」
一瞬、二人の間に火花が散ったように見えた梟だが、杉村に促され、
「あ、ああ。突拍子もないこと聞くんだけど、十四日に茶道室で俺にチョコ渡すのって、お前? なんかね、コイツがそういう約束を取り付けてくれって誰かに頼まれた感じがするって。で、どーなの? ぶっちゃけ」
「おっ、鋭いね社束くん。うん、当たり。実は、人に頼まれてるの。でも、さすがに誰から、っていうのは言えないの。けど、冠深乃もよく知ってる子だから」
杉村は人差し指を唇に当て、意地悪げに笑った。狼怜は、得意げに梟を見る。
「ホレ見てみい。当たったで」
「んなくだらねぇことで喜ぶな、馬鹿。あ、杉村ありがとうな」
「ううん。じゃあ」
梟は杉村に手を振ると、とりあえず目の前にいる鬱陶しい男の頭に拳を振り下ろした。そして、腕組みをして言う。
「お前のその顔むっちゃ腹立つ!」
「せやからって殴んのは反則やで・・・・・・むっちゃ痛いやん!!」
「痛いようにしたんだ、当たり前だろ」
「ぐっ・・・・・・!! むぁ〜っ!! 頭がこんがらがって言い返せへん!!」
「へっ。俺様に口喧嘩で勝とうなんて百万年、いや未来永劫無理だ!!」
頭を掻きむしりながら狼怜は悔しげに梟を睨む。だが、そんな視線を送られていようが梟にとっては何処吹く風。口笛を吹きながら、難なくサラリとかわした。その直後、ホームルーム開始のチャイムが鳴る。話をしたりしていた生徒達は、慌てて席に着いた。だが、挨拶のあとに担任が軽く連絡事項を言っただけでホームルームは終了した。
梟はぐるんと後ろを向き、ホームルームの間も唸っていた狼怜の頭にデコピンをかました。すると狼怜は、がばっと起きあがり、
「でも、恋愛経験はオレの方が豊富やで!」
「うっ・・・・・・。お、俺は今まで好きな女の子がいなかっただけだ!」
痛いところをつかれた梟は、ムキになってそう言い返した。が、
「それじゃあなにか? オレはそこらじゅうの子全員好きになる優柔不断なやつっちゅーことか?!」
珍しく言い返した狼怜に、梟は少し圧され気味に言う。
「あ、や、別にそういうことじゃなくて・・・・・・なんつーかその・・・・・・ゴメン。でも・・・・・・なんでそこまでムキになるんだよ?」
すると、狼怜の表情が少しだけ翳った。
「・・・・・・だってオレ、今までそういう風に見られてきたんやもん。お前だって経験あるはずやで? かるぅい、遊びまくってる男って言われるの。でも、オレかて自分が好きンなった子は大切にしてる。浮気もいっぺんもしてへんし。ただ、周りのヤツより少し女の子に話しかけるのが上手いだけや。ただ、付き合った子が人より少し多いだけやのに」
「ろう、れい?」
「オレかて、恋愛に関しては真面目や」
その言葉はヤケに真剣味を帯びていた。だからだろうか。梟が、彼の蒼い瞳から目を離すことができなくなったのは。
「狼怜・・・・・・悪かったな」
「やー、分かってくれたらええねん」
「俺、狼怜相手にこんなに真面目に謝ったのホンマ久しぶりやわ」
「ていうか、絶対自分から謝りよらんからなぁ、梟は。意地っ張りやからねぇ」
「うっさい。一言多いねん」
ポカッと軽く狼怜の頭を叩き、梟は言う。狼怜は笑いながらそれを聞き流した。
「・・・・・・冠深乃、社束。そろそろ授業を始めたいんだが、準備はいいだろうか?」
「げ、珠洲・・・・・・そっか、一限は数学だっけ・・・・・・」
「そうだ。楽しい楽しい数学だ。ところで、いい加減『先生』を付けることを覚えようか、冠深乃」
「無☆理」
「爽やかに言ってンじゃない!! コラそこ社束ぁーっ!! 何処へ行くかーっ!!」
石島が指差した先には、窓から飛び降りようとする狼怜の姿が。狼怜はいつの間にか、上履きではなくナイキのスニーカーに履き替えていた。狼怜は振り向き、ニィと笑う。
「サボりでーす。六限が終わるまでには帰ってこれるよう努力しまーす」
言い終わるやいなや、狼怜は窓から飛び降りた。ここは三階。落ちたら無傷では済まない筈。だが、石島が窓から身を乗り出して地上を見下ろせば、元気そうにこちらに手を振る狼怜の姿があった。
「お前もさも当たり前のように言うなーっ! って、オイッ!! 冠深乃っ?!」
「あ、ゴメーン珠洲。ぶっちゃけ、久しぶりに狼怜と遊びたいんで便乗してきまーす」
狼怜を追うようにして、梟も別の窓から飛び降りる。彼も、いつのまにやら上履きからコンバースの靴に履き替えていた。
梟は、まるで軽業師のような身のこなしでひらりと地上に着地した。そして、狼怜とハイタッチを交わす。
「ざけんなクソガキどもぉぉぉぉぉぉ!! っちゅーか、便乗せんでいいわぁぁぁぁぁぁ!!」
少し遅れて叫んだ石島に、梟と狼怜は顔を見合わせると、笑いながらあっかんべーと舌を突き出した。そして、
「子供は風の子、俺たちは悪い子、ってね!」
「じゃ、行ってきまーす」
「上手い!! って、そういう問題ちゃうわぁぁぁぁぁぁ!!」
未だ叫び続ける石島の声を背中に受けながら、梟と狼怜は駆けていく。全身に風を感じながら、二人は校庭を駆け抜け、校門の外へと飛び出した。
その後、本当に六限が終わるまでに帰ってきた二人を待ち受けていたのは、石島のありがたぁいお説教(正座で三時間ずっと)だったとか。
狼怜が転校してきて数日が経った、二月十日。
「ろーれいくーん・・・・・・死ぬぅ」
「オレもや・・・・・・」
登校早々ぐったりとした表情で倒れ込むように教室の机とご対面した二人は、ほぼ同じタイミングで溜め息を吐き出した。なぜこんなに二人が疲れていたのかというと、ここに来るまでに幾つもの甲高い声に囲まれたからである。
――それは、今朝の登校中に起こった。
「あっ、来た!!」
校門を通り抜けるなり梟と狼怜は、この学校の女の子全員じゃないんだろうかと思う程の沢山の女の子に捕まった。後輩も、同級生も、そして先輩もいる。その中から、同級生であろう女の子が梟の腕に自分の腕を絡ませ、身体からキツすぎる香水をプンプンさせながらすり寄ってきた。梟は、見たことがないのに妙に馴れ馴れしいその二人に、少し気圧された。
「冠深乃くーん! 十四日ってぇ、空いてるぅ?」
「え、い、いやその、うん、まぁ」
「じゃぁー、渡したいモノがあるからぁ、十四日の放課後に二年五組の教室来てくれるぅ?」
「あ、え?」
「あーっ、ミキティずるぅい! アタシも渡したいのにぃ!」
「じゃあアンタも同じ時に渡せばいーじゃーん。いいよね? 冠深乃くん、優しいし♪」
「え、まぁ、うん、別に大丈夫・・・・・・」
「ありがとぉ☆ じゃあ、またねぇww」
「あ、あぁ・・・・・・また・・・・・・」
漸く一つの関門を突破した梟だったが、また新たな女の子達に囲まれてしまう。梟は、果たして無事に教室まで辿り着くことが叶うのだろうかと、僅かながら不安を抱きはじめた。
去年までは少なくともこんなに迫られたことはなかった。精々、下駄箱の中に手紙が大量に入っていたりして、直接言いに来た子はほんの数人程度だったのだ。初めての出来事にどう対応していいかわからなくなり困り果てた梟は、慌てて狼怜を仰ぎ見た。だが、そこには梟と同じように女の子、しかも後輩に囲まれしどろもどろになっている狼怜がいた。
「あっ、やしろ“づ“かせんぱぁい♪先輩はぁ、十四日どうですかぁ?」
「いや空いてるっちゃあ、空いてるけど・・・・・・オレ、やしろ“づ”かやのうて、やしろ“つ”か・・・・・・」
「そーなんですかぁ? わぁ、いいこと知っちゃったぁっ☆」
「(別にいいことでもないけどな)
そーかいそーかい・・・・・・で十四日、オレはどこに行けばいいん?」
だが、ようやく調子が戻ってきたのか、狼怜は梟のようにおどおどとした対応ではなく、ちゃんとした口調で話している。
「それじゃぁ、一年三組の教室でいいですかぁ?」
「わかった。自分ら全員一年三組でええんか?」
「いいですぅ♪ じゃあ、待ってますねぇ☆」
「了解やで」
慣れているのか、ボディタッチもさりげなくかわしている狼怜を、梟は唖然として見つめた。てっきり、自分と同じようにテンパるものだと思いこんでいたからだ。だが、梟は肝心なことを忘れていた。彼が、かなりの軟派な人間だということを。
「まだ・・・・・・続くのか・・・・・・?」
硬派な梟には到底対処しきれない程、女の子達の迫り方は凄かった。さしもの狼怜も、最後の方にはぐったりしてしまっていた。
――と、いうわけなのである。
「あれ、冠深乃? と、社束くん。どしたの? 朝っぱらから、死にそうにして」
登校してきた杉村は、未だ机に伏せていた梟と狼怜に声を掛けた。あの日から杉村は、梟の良き女友達であり、そして良き恋の相談相手でもあった。梟は首だけ動かして、声がした方を見る。そして、声を掛けたのが杉村だとわかると、少し表情を和らげた。
「あ、杉村・・・・・・おはよー」
「うん、おはよう。で、なにがあったの?」
「聞いてくれよ、杉村ぁ。実はさぁ――――と、いうことがあったんだよ・・・・・・」
杉村は話を聞いた後、声を出して笑い出した。そして、
「なぁんだ、それでそんなに疲れ切ってたんだね。や〜、冠深乃の反応は面白いなぁ」
「そんな暢気なこと言うなよ〜・・・・・・こちとら、今日一日のエネルギー全部吸い取られた気がするんだってのに」
「ゴメンゴメン、笑いすぎたね。そっかぁ、バレンタインかぁ。もうそんな時期だね。で、どーすんの冠深乃。全部受け取りにいくつもり?」
笑いすぎて浮かんだ涙を拭いながら、杉村はそう聞いた。答えは大体見当がついていたが。
「当たり前じゃん・・・・・・約束は守らねぇと」
「ふーん・・・・・・じゃあその日、私も予約ね。最後でいいから、茶道室に来てくれる?」
「ああ、もうこうなったらどうにでもなれだ。十四日、茶道室だな?」
「うん、よろしく〜」
杉村はやけにスッキリしたような顔で、自分の席へと戻っていった。その直後、その机の周りに女の子が群がるのを二人は見逃さなかった。恐らく、何を話していたのか根掘り葉掘り聞かれているのだろう。が、杉村は意外にも場数を踏んでいて、のらりくらりと質問をかわすことだろうから、詳しく聞き出すことは無理に等しい。案の定笑いながら対応している杉村を見て、梟は苦笑を零した。そして、さきほどから首を捻っている狼怜に向き直る。それを見計らったかのように、狼怜が話しかけた。
「なぁ、梟。あの杉村って子も、お前のことが好きなんやろか・・・・・・? なんか、ちゃう気がするんやけどなぁ・・・・・・」
「そうか? よくわかんなかったけど・・・・・・」
「なんか、頼まれたって感じするんよなぁ」
「んなに気になるんなら、本人に直接聞きゃあいいじゃんよ。呼んでやるから」
そう言って梟は、ようやく質問攻めから解放され、仲のいい友達と話をしていた杉村を呼んだ。そして、狼怜を指差しながら言う。
「コイツがさ、さっきからお前が気になるってウゼーの」
「あら。もしかして惚れちゃった?」
「アホか。スマンかったな、お前はタイプやないんよ」
「それはお互い様ね。私もタイプじゃないの。で、なにが気になるって?」
一瞬、二人の間に火花が散ったように見えた梟だが、杉村に促され、
「あ、ああ。突拍子もないこと聞くんだけど、十四日に茶道室で俺にチョコ渡すのって、お前? なんかね、コイツがそういう約束を取り付けてくれって誰かに頼まれた感じがするって。で、どーなの? ぶっちゃけ」
「おっ、鋭いね社束くん。うん、当たり。実は、人に頼まれてるの。でも、さすがに誰から、っていうのは言えないの。けど、冠深乃もよく知ってる子だから」
杉村は人差し指を唇に当て、意地悪げに笑った。狼怜は、得意げに梟を見る。
「ホレ見てみい。当たったで」
「んなくだらねぇことで喜ぶな、馬鹿。あ、杉村ありがとうな」
「ううん。じゃあ」
梟は杉村に手を振ると、とりあえず目の前にいる鬱陶しい男の頭に拳を振り下ろした。そして、腕組みをして言う。
「お前のその顔むっちゃ腹立つ!」
「せやからって殴んのは反則やで・・・・・・むっちゃ痛いやん!!」
「痛いようにしたんだ、当たり前だろ」
「ぐっ・・・・・・!! むぁ〜っ!! 頭がこんがらがって言い返せへん!!」
「へっ。俺様に口喧嘩で勝とうなんて百万年、いや未来永劫無理だ!!」
頭を掻きむしりながら狼怜は悔しげに梟を睨む。だが、そんな視線を送られていようが梟にとっては何処吹く風。口笛を吹きながら、難なくサラリとかわした。その直後、ホームルーム開始のチャイムが鳴る。話をしたりしていた生徒達は、慌てて席に着いた。だが、挨拶のあとに担任が軽く連絡事項を言っただけでホームルームは終了した。
梟はぐるんと後ろを向き、ホームルームの間も唸っていた狼怜の頭にデコピンをかました。すると狼怜は、がばっと起きあがり、
「でも、恋愛経験はオレの方が豊富やで!」
「うっ・・・・・・。お、俺は今まで好きな女の子がいなかっただけだ!」
痛いところをつかれた梟は、ムキになってそう言い返した。が、
「それじゃあなにか? オレはそこらじゅうの子全員好きになる優柔不断なやつっちゅーことか?!」
珍しく言い返した狼怜に、梟は少し圧され気味に言う。
「あ、や、別にそういうことじゃなくて・・・・・・なんつーかその・・・・・・ゴメン。でも・・・・・・なんでそこまでムキになるんだよ?」
すると、狼怜の表情が少しだけ翳った。
「・・・・・・だってオレ、今までそういう風に見られてきたんやもん。お前だって経験あるはずやで? かるぅい、遊びまくってる男って言われるの。でも、オレかて自分が好きンなった子は大切にしてる。浮気もいっぺんもしてへんし。ただ、周りのヤツより少し女の子に話しかけるのが上手いだけや。ただ、付き合った子が人より少し多いだけやのに」
「ろう、れい?」
「オレかて、恋愛に関しては真面目や」
その言葉はヤケに真剣味を帯びていた。だからだろうか。梟が、彼の蒼い瞳から目を離すことができなくなったのは。
「狼怜・・・・・・悪かったな」
「やー、分かってくれたらええねん」
「俺、狼怜相手にこんなに真面目に謝ったのホンマ久しぶりやわ」
「ていうか、絶対自分から謝りよらんからなぁ、梟は。意地っ張りやからねぇ」
「うっさい。一言多いねん」
ポカッと軽く狼怜の頭を叩き、梟は言う。狼怜は笑いながらそれを聞き流した。
「・・・・・・冠深乃、社束。そろそろ授業を始めたいんだが、準備はいいだろうか?」
「げ、珠洲・・・・・・そっか、一限は数学だっけ・・・・・・」
「そうだ。楽しい楽しい数学だ。ところで、いい加減『先生』を付けることを覚えようか、冠深乃」
「無☆理」
「爽やかに言ってンじゃない!! コラそこ社束ぁーっ!! 何処へ行くかーっ!!」
石島が指差した先には、窓から飛び降りようとする狼怜の姿が。狼怜はいつの間にか、上履きではなくナイキのスニーカーに履き替えていた。狼怜は振り向き、ニィと笑う。
「サボりでーす。六限が終わるまでには帰ってこれるよう努力しまーす」
言い終わるやいなや、狼怜は窓から飛び降りた。ここは三階。落ちたら無傷では済まない筈。だが、石島が窓から身を乗り出して地上を見下ろせば、元気そうにこちらに手を振る狼怜の姿があった。
「お前もさも当たり前のように言うなーっ! って、オイッ!! 冠深乃っ?!」
「あ、ゴメーン珠洲。ぶっちゃけ、久しぶりに狼怜と遊びたいんで便乗してきまーす」
狼怜を追うようにして、梟も別の窓から飛び降りる。彼も、いつのまにやら上履きからコンバースの靴に履き替えていた。
梟は、まるで軽業師のような身のこなしでひらりと地上に着地した。そして、狼怜とハイタッチを交わす。
「ざけんなクソガキどもぉぉぉぉぉぉ!! っちゅーか、便乗せんでいいわぁぁぁぁぁぁ!!」
少し遅れて叫んだ石島に、梟と狼怜は顔を見合わせると、笑いながらあっかんべーと舌を突き出した。そして、
「子供は風の子、俺たちは悪い子、ってね!」
「じゃ、行ってきまーす」
「上手い!! って、そういう問題ちゃうわぁぁぁぁぁぁ!!」
未だ叫び続ける石島の声を背中に受けながら、梟と狼怜は駆けていく。全身に風を感じながら、二人は校庭を駆け抜け、校門の外へと飛び出した。
その後、本当に六限が終わるまでに帰ってきた二人を待ち受けていたのは、石島のありがたぁいお説教(正座で三時間ずっと)だったとか。
2008.05.28
To you of the First Love. 第六話
第六話
狼怜の突然の訪問から数日経ったある日の朝。今日は、狼怜の転校初日でもあった。
「おいおい・・・・・・やけに冷えると思ったら、雪降ってんじゃねぇか。おい、狼怜! お前、コートとかマフラーとか、持ってきてんのか?」
「一応な。でも、よかったわぁ、持ってきといて。危うく、転校初日から風邪引くところやった」
「それならいいけどな。それより、朝飯できたぜ」
「おお、ありがとさん。あ、梟、そのジャム取ってぇな」
「ん、おお。ホラよ」
狼怜が梟の家に泊まってまだ二日だというのに、まるで随分前から一緒に住んでいたかのような雰囲気の会話を、二人は交わしていた。それ程、なんの違和感もなく梟宅に狼怜は溶け込んでいた。
梟はマーガリンを自分の分の食パンに塗りながら、正面に座ってニュースを見ながら食パンにラズベリージャムを塗る狼怜に向かって、さりげなく言った。
「狼怜、俺はお前と週末を過ごしてなんとなく気付いたんだが・・・・・・お前、ここに居座る気だろ」
「ギクッ!!」
「図星か・・・・・・」
まずいといった顔で、食パンを囓りつつチラチラと顔色を窺う狼怜に、梟は溜め息をつくと、
「お前の好きにしろよ」
そう言って、マーガリンを塗りおえた食パンを囓った後に、コーヒーを一口飲んだ。
「え・・・・・・?」
「だーかーらー、別に何ヶ月だろうと何年だろうと、ここに居座ってもいいって言ってんだよ。どうせ、父さん達は外国飛び回ってっから帰ってこねぇんだ。一人増えたって変わらねぇ。その代わり、飯と風呂掃除は交代制な。部屋の掃除は自分でしろ」
「ありがとさん、梟!!」
「おう、感謝しろ。ついでにジャムの瓶を片付けてこい」
なんとも恩着せがましく言って、梟はふんぞり返った。狼怜は苦笑いをすると、
「へいへい、分かったわ。ったく、態度ごっつデカァなりよって・・・・・・まぁ、いつものことか」
ブツブツと文句を言いながらも、梟の命令を律儀に遂行していた狼怜なのであった。
朝食も食べ終えた二人は、揃って登校していた。だが、なにやら視線が痛い。特に同年代の女の子達からの、だ。
「おい、狼怜・・・・・・俺の隣を歩くな。目立つ」
「オレちゃうで。目立ってンは梟やがな」
「嘘言うな、何で俺が」
「冗談いややわ〜。無自覚ですかい」
「あぁ? 何がだ、わけわかんねぇ。くそっ、苛々する。狼怜、さっさと行くぞっ!!」
「・・・・・・イエッサー」
二人がこんな会話をしているとは露知らず、女の子達はキャーキャーと騒ぎながら見つめる。まるで、アイドルが通るかのように。
それもそうだろう。日本人らしからぬ顔立ちに蒼い瞳の色をしている狼怜と、同じく日本人らしからぬ顔立ちと金色の髪をもつ梟。その二人が並んで登校しているとくれば、注目の的となるのは当たり前のことである。尤も、梟はその事を自覚してはいなかったから、周りの嬌声はただの騒音としか感じられていなかった。
早歩きで進む二人の間をふいに、強い風が吹き抜けていった。煽られて乱れた梟の髪の毛が狼怜の視界を覆う。狼怜は立ち止まり、手で髪を押さえながら前を歩く梟の背中を見つめた。乱れた髪の隙間から見える凛々しい横顔が、女の子達の視線をかっさらっていくのを感じながら。
「(男のオレから見てもカッコええって思えてしまうんやから、恐ろしいヤツやわぁ、梟は)
そんな顔して見てくなや、梟。・・・・・・今、行くわ」
怪訝そうな顔をして振り向いてきた梟に手を合わせて謝り、狼怜は小走りに近寄ると再び隣に並んで歩き始めた。
「あっ、冠深乃先輩・・・・・・と、社束先輩。おはようございます」
校門近くまで来たとき、背後から聞き覚えのある声が聞こえて、梟と狼怜は揃って振り向いた。
「おー、麒麟。おはよー」
「麒麟ちゃん、おはようさん」
二人が振り向いたそこには、予想通り麒麟が立っていた。麒麟は、微笑んで二人を見た。そして、口元を綻ばせると、
「こんなところで会えるなんて思ってませんでした。でも、よかったです。先輩に、お渡ししたい物がありましたから・・・・・・」
「えっ? 俺に渡したい物?」
「ええ。ほら、この前言ってたでしょう? 『ミステリーで面白いのがあったら貸してほしい』って」
「あ・・・・・・ああ〜!! そうか、そういえば言ったね」
思い出したように言った梟に、麒麟は苦笑いを零した。そして、鞄の中からいつかに見た赤いタータンチェック柄のカバーが掛けられた文庫本を取り出すと、梟に差し出した。
「江戸川乱歩とか赤川次郎もいいですけど、この人の作品も面白いんですよ。東野圭吾の“どちらかが彼女を殺した”です」
「おっ、東野圭吾だ。この人って、“白夜行”とか、“探偵ガリレオ”の人でしょ?」
本を受け取りながら梟がそう聞くと、麒麟は驚いたような表情をして、
「あれ、知ってたんですか? なんだか・・・・・・意外ですね」
梟の顔を凝視しながら言った。梟は、
「知ってるもなにも・・・・・・上の二つは読んだことあるからな。でもま、サンキュ」
「本格的なミステリーで、凄く好きなんですよ。絶対、先輩も好きそうだと思って」
「そりゃ楽しみにしておくぜ」
楽しげに会話をしながら校門を抜け、二人は昇降口に入っていった。一人置いてけぼりにされた狼怜は、完全に傍観者を決め込んでいる。だが、その表情には呆れと憂いが入り乱れていた。
「・・・・・・よぉやるわ、二人も。どんだけ自分たちが注目されてるかも知らんでから・・・・・・最強の天然どもやな、ホンマ」
心配そうに呟いた狼怜は、二人(特に麒麟)に向けられる視線の発信源を見て、深い深い溜め息をついた。
それは、赤色や青色のリボンを付けた女の先輩方が発するもので、その視線には少なからず殺気や嫉妬が入り混じっていた。時折、ヒソヒソ声で話している声さえ聞こえる。
「ねえ、あの子さぁ――」
「ちょっと、マジでぇ? あの冠深乃くんが――」
「生意気だよね、アイツ――」
「そうそう。一年の癖に――」
否応なしに狼怜の地獄耳に入ってくるそんな会話に、狼怜はもう一度溜め息をついた。その表情は相変わらず暗く、これから二人に襲いかかる“何か”への不安を、より濃くありありと示していた。
「梟・・・・・・頼むから、麒麟ちゃんから目ぇ離さんでおいてくれな・・・・・・嫌な予感がするんや・・・・・・」
髪を掻き上げ、顔を引き締めた狼怜は、梟に駆け寄る。その表情には、先程までの憂いなどは全く無かった。
「そこの仲良いお二人さん。オレ、職員室行くからここでお別れや。運があれば、“またあとで”やな!」
「あぁ。じゃあな、狼怜」
「社束先輩、それでは」
梟は手を振り、麒麟はお辞儀をしてから、校内へと入っていった。狼怜もまた、スニーカーを脱ぐと持参していたシューズに履き替え、脱いだスニーカーを手に職員室に向かった。
「えーと、今日から二年三組に編入して来ました、社束狼怜いいます。みんな、よろしゅう!」
見事なまでの0円スマイルで、教卓の横に立った狼怜はそう言った。それを見て、女の子は歓声を上げた。中には、鼻血を出して気絶してしまっている子までいた。当の本人はけろっとした顔で、
「(相変わらずの破壊力やなー・・・・・・オレ、スゴッ)
ほんで先生、オレはどこの席なん?」
隣に立って、倒れる生徒達を唖然として見つめていた担任に聞いた。その声で我に返った担任の女教師は、
「あっ、ちょっと待ってね、ええと・・・・・・あら、冠深乃くん。君の後ろ、誰かいたかしら?」
「いませんけど・・・・・・」
嫌な予感がした梟は、控えめにそう答えた。すると、担任はニッコリ笑顔を浮かべると、
「それなら決定ね。社束くんは、冠深乃くんの後ろね」
「えっ、ちょ、まっ、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」
叫ぶ梟を完璧に無視して、担任は話を進めていった。なんというかもう、ご愁傷様である。
「せ、先生っ!! それだけは止めて下さい!! コイツの前なんて死んでも嫌だ!! 即時変更を求めます!! それが駄目なら俺が席移動します!!」
「でも冠深乃くん、もう決定しちゃったし・・・・・・それに、そこ以外に空きの席なんて無いもの」
「何でだぁぁ!! 何故俺の後ろだけが空きなんだよ、こんなにいいタイミングで!! 誰か転校してったのか!! あ゛ぁ?!」
必死で席の移動を求める梟の肩に狼怜は手を置き、
「うるさいで、梟。今はホームルームの途中や。それに、担任の決定は絶対やで?」
「お前は黙っときぃや!! なんで話ややこしゅうすんねん!! 担任の決定は絶対や、なんて一体いつの時代の話や!! 少なくとも俺とお前が前いた学校の俺らのクラスでは、やろが!! シバキ回すぞコルァ!!」
「もー・・・・・・ちょっと梟、キレやすいで? カルシウム足りてへんのとちゃうん?」
「余計なお世話じゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ドゴォと凄まじい音を立てて、狼怜の身体がふっ飛ぶ。右ストレートを狼怜の顔面にぶちかました梟は、乱れた息を整えながら、再度言った。必死すぎて、口調が関西弁になっているが。
「先生、お願いやから席変えてぇな。俺、嫌やで!! ここに来てまたコイツと前後になんの!」
「ごめんね、冠深乃くん。でも、席は変えられないわ」
「マジかいな・・・・・・先生にそこまで言われたら、引き下がるしかねぇか。こっちこそすいません、我が儘言っちゃって」
「いいのよ〜。それじゃあ、ホームルーム続けるわね〜」
クラス全体にのほほんとした雰囲気が漂う中、狼怜がポツリと呟いた。
「オレは放置かい・・・・・・切なっ!」
憐れ狼怜。
狼怜の突然の訪問から数日経ったある日の朝。今日は、狼怜の転校初日でもあった。
「おいおい・・・・・・やけに冷えると思ったら、雪降ってんじゃねぇか。おい、狼怜! お前、コートとかマフラーとか、持ってきてんのか?」
「一応な。でも、よかったわぁ、持ってきといて。危うく、転校初日から風邪引くところやった」
「それならいいけどな。それより、朝飯できたぜ」
「おお、ありがとさん。あ、梟、そのジャム取ってぇな」
「ん、おお。ホラよ」
狼怜が梟の家に泊まってまだ二日だというのに、まるで随分前から一緒に住んでいたかのような雰囲気の会話を、二人は交わしていた。それ程、なんの違和感もなく梟宅に狼怜は溶け込んでいた。
梟はマーガリンを自分の分の食パンに塗りながら、正面に座ってニュースを見ながら食パンにラズベリージャムを塗る狼怜に向かって、さりげなく言った。
「狼怜、俺はお前と週末を過ごしてなんとなく気付いたんだが・・・・・・お前、ここに居座る気だろ」
「ギクッ!!」
「図星か・・・・・・」
まずいといった顔で、食パンを囓りつつチラチラと顔色を窺う狼怜に、梟は溜め息をつくと、
「お前の好きにしろよ」
そう言って、マーガリンを塗りおえた食パンを囓った後に、コーヒーを一口飲んだ。
「え・・・・・・?」
「だーかーらー、別に何ヶ月だろうと何年だろうと、ここに居座ってもいいって言ってんだよ。どうせ、父さん達は外国飛び回ってっから帰ってこねぇんだ。一人増えたって変わらねぇ。その代わり、飯と風呂掃除は交代制な。部屋の掃除は自分でしろ」
「ありがとさん、梟!!」
「おう、感謝しろ。ついでにジャムの瓶を片付けてこい」
なんとも恩着せがましく言って、梟はふんぞり返った。狼怜は苦笑いをすると、
「へいへい、分かったわ。ったく、態度ごっつデカァなりよって・・・・・・まぁ、いつものことか」
ブツブツと文句を言いながらも、梟の命令を律儀に遂行していた狼怜なのであった。
朝食も食べ終えた二人は、揃って登校していた。だが、なにやら視線が痛い。特に同年代の女の子達からの、だ。
「おい、狼怜・・・・・・俺の隣を歩くな。目立つ」
「オレちゃうで。目立ってンは梟やがな」
「嘘言うな、何で俺が」
「冗談いややわ〜。無自覚ですかい」
「あぁ? 何がだ、わけわかんねぇ。くそっ、苛々する。狼怜、さっさと行くぞっ!!」
「・・・・・・イエッサー」
二人がこんな会話をしているとは露知らず、女の子達はキャーキャーと騒ぎながら見つめる。まるで、アイドルが通るかのように。
それもそうだろう。日本人らしからぬ顔立ちに蒼い瞳の色をしている狼怜と、同じく日本人らしからぬ顔立ちと金色の髪をもつ梟。その二人が並んで登校しているとくれば、注目の的となるのは当たり前のことである。尤も、梟はその事を自覚してはいなかったから、周りの嬌声はただの騒音としか感じられていなかった。
早歩きで進む二人の間をふいに、強い風が吹き抜けていった。煽られて乱れた梟の髪の毛が狼怜の視界を覆う。狼怜は立ち止まり、手で髪を押さえながら前を歩く梟の背中を見つめた。乱れた髪の隙間から見える凛々しい横顔が、女の子達の視線をかっさらっていくのを感じながら。
「(男のオレから見てもカッコええって思えてしまうんやから、恐ろしいヤツやわぁ、梟は)
そんな顔して見てくなや、梟。・・・・・・今、行くわ」
怪訝そうな顔をして振り向いてきた梟に手を合わせて謝り、狼怜は小走りに近寄ると再び隣に並んで歩き始めた。
「あっ、冠深乃先輩・・・・・・と、社束先輩。おはようございます」
校門近くまで来たとき、背後から聞き覚えのある声が聞こえて、梟と狼怜は揃って振り向いた。
「おー、麒麟。おはよー」
「麒麟ちゃん、おはようさん」
二人が振り向いたそこには、予想通り麒麟が立っていた。麒麟は、微笑んで二人を見た。そして、口元を綻ばせると、
「こんなところで会えるなんて思ってませんでした。でも、よかったです。先輩に、お渡ししたい物がありましたから・・・・・・」
「えっ? 俺に渡したい物?」
「ええ。ほら、この前言ってたでしょう? 『ミステリーで面白いのがあったら貸してほしい』って」
「あ・・・・・・ああ〜!! そうか、そういえば言ったね」
思い出したように言った梟に、麒麟は苦笑いを零した。そして、鞄の中からいつかに見た赤いタータンチェック柄のカバーが掛けられた文庫本を取り出すと、梟に差し出した。
「江戸川乱歩とか赤川次郎もいいですけど、この人の作品も面白いんですよ。東野圭吾の“どちらかが彼女を殺した”です」
「おっ、東野圭吾だ。この人って、“白夜行”とか、“探偵ガリレオ”の人でしょ?」
本を受け取りながら梟がそう聞くと、麒麟は驚いたような表情をして、
「あれ、知ってたんですか? なんだか・・・・・・意外ですね」
梟の顔を凝視しながら言った。梟は、
「知ってるもなにも・・・・・・上の二つは読んだことあるからな。でもま、サンキュ」
「本格的なミステリーで、凄く好きなんですよ。絶対、先輩も好きそうだと思って」
「そりゃ楽しみにしておくぜ」
楽しげに会話をしながら校門を抜け、二人は昇降口に入っていった。一人置いてけぼりにされた狼怜は、完全に傍観者を決め込んでいる。だが、その表情には呆れと憂いが入り乱れていた。
「・・・・・・よぉやるわ、二人も。どんだけ自分たちが注目されてるかも知らんでから・・・・・・最強の天然どもやな、ホンマ」
心配そうに呟いた狼怜は、二人(特に麒麟)に向けられる視線の発信源を見て、深い深い溜め息をついた。
それは、赤色や青色のリボンを付けた女の先輩方が発するもので、その視線には少なからず殺気や嫉妬が入り混じっていた。時折、ヒソヒソ声で話している声さえ聞こえる。
「ねえ、あの子さぁ――」
「ちょっと、マジでぇ? あの冠深乃くんが――」
「生意気だよね、アイツ――」
「そうそう。一年の癖に――」
否応なしに狼怜の地獄耳に入ってくるそんな会話に、狼怜はもう一度溜め息をついた。その表情は相変わらず暗く、これから二人に襲いかかる“何か”への不安を、より濃くありありと示していた。
「梟・・・・・・頼むから、麒麟ちゃんから目ぇ離さんでおいてくれな・・・・・・嫌な予感がするんや・・・・・・」
髪を掻き上げ、顔を引き締めた狼怜は、梟に駆け寄る。その表情には、先程までの憂いなどは全く無かった。
「そこの仲良いお二人さん。オレ、職員室行くからここでお別れや。運があれば、“またあとで”やな!」
「あぁ。じゃあな、狼怜」
「社束先輩、それでは」
梟は手を振り、麒麟はお辞儀をしてから、校内へと入っていった。狼怜もまた、スニーカーを脱ぐと持参していたシューズに履き替え、脱いだスニーカーを手に職員室に向かった。
「えーと、今日から二年三組に編入して来ました、社束狼怜いいます。みんな、よろしゅう!」
見事なまでの0円スマイルで、教卓の横に立った狼怜はそう言った。それを見て、女の子は歓声を上げた。中には、鼻血を出して気絶してしまっている子までいた。当の本人はけろっとした顔で、
「(相変わらずの破壊力やなー・・・・・・オレ、スゴッ)
ほんで先生、オレはどこの席なん?」
隣に立って、倒れる生徒達を唖然として見つめていた担任に聞いた。その声で我に返った担任の女教師は、
「あっ、ちょっと待ってね、ええと・・・・・・あら、冠深乃くん。君の後ろ、誰かいたかしら?」
「いませんけど・・・・・・」
嫌な予感がした梟は、控えめにそう答えた。すると、担任はニッコリ笑顔を浮かべると、
「それなら決定ね。社束くんは、冠深乃くんの後ろね」
「えっ、ちょ、まっ、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」
叫ぶ梟を完璧に無視して、担任は話を進めていった。なんというかもう、ご愁傷様である。
「せ、先生っ!! それだけは止めて下さい!! コイツの前なんて死んでも嫌だ!! 即時変更を求めます!! それが駄目なら俺が席移動します!!」
「でも冠深乃くん、もう決定しちゃったし・・・・・・それに、そこ以外に空きの席なんて無いもの」
「何でだぁぁ!! 何故俺の後ろだけが空きなんだよ、こんなにいいタイミングで!! 誰か転校してったのか!! あ゛ぁ?!」
必死で席の移動を求める梟の肩に狼怜は手を置き、
「うるさいで、梟。今はホームルームの途中や。それに、担任の決定は絶対やで?」
「お前は黙っときぃや!! なんで話ややこしゅうすんねん!! 担任の決定は絶対や、なんて一体いつの時代の話や!! 少なくとも俺とお前が前いた学校の俺らのクラスでは、やろが!! シバキ回すぞコルァ!!」
「もー・・・・・・ちょっと梟、キレやすいで? カルシウム足りてへんのとちゃうん?」
「余計なお世話じゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ドゴォと凄まじい音を立てて、狼怜の身体がふっ飛ぶ。右ストレートを狼怜の顔面にぶちかました梟は、乱れた息を整えながら、再度言った。必死すぎて、口調が関西弁になっているが。
「先生、お願いやから席変えてぇな。俺、嫌やで!! ここに来てまたコイツと前後になんの!」
「ごめんね、冠深乃くん。でも、席は変えられないわ」
「マジかいな・・・・・・先生にそこまで言われたら、引き下がるしかねぇか。こっちこそすいません、我が儘言っちゃって」
「いいのよ〜。それじゃあ、ホームルーム続けるわね〜」
クラス全体にのほほんとした雰囲気が漂う中、狼怜がポツリと呟いた。
「オレは放置かい・・・・・・切なっ!」
憐れ狼怜。
2008.04.28
眠れる君に目覚めのキスを。
はい,お久し振りです。美弥です。
なななんと,二周年記念小説がようやく書き上がりました!!
書きあがったん,です,がっ!!
これがまたかなり長いんですよね〜。ですから,これから読まれるという方は,それ相応の覚悟をしていただきたいと思います。
文字大きい方が読みやすいですかねぇ? でも,そうしたらさらに長くなるんですよねぇ。
どうしましょう,はい。
てゆーか,誰かこういうお題小説を短く完結に分かりやすくそして中身の濃いものが書けるコツとかをこのアホな美弥に伝授していただけないでしょうか?!
あと,今回「シリアス→ハッピーエンド」ということでしたが,少しギャグが混ざりつつあるところもあるし,エピローグがちょっとアレなんですね。
でも,一応ハッピーエンドなんで!! そういうことにしておいてください!!
では,「長くてもばっちこーい!!」な方,下のリンクをクリックしておすすみ下さい。
「えー,めんどくさーい」という方,連載小説は短いのでどうぞそちらへおすすみ下さい。
駄文ではありますが,我がブログの二周年(二ヶ月も遅れましたが)を記念して。
一時の夢を,楽しんできてください。
なななんと,二周年記念小説がようやく書き上がりました!!
書きあがったん,です,がっ!!
これがまたかなり長いんですよね〜。ですから,これから読まれるという方は,それ相応の覚悟をしていただきたいと思います。
文字大きい方が読みやすいですかねぇ? でも,そうしたらさらに長くなるんですよねぇ。
どうしましょう,はい。
てゆーか,誰かこういうお題小説を短く完結に分かりやすくそして中身の濃いものが書けるコツとかをこのアホな美弥に伝授していただけないでしょうか?!
あと,今回「シリアス→ハッピーエンド」ということでしたが,少しギャグが混ざりつつあるところもあるし,エピローグがちょっとアレなんですね。
でも,一応ハッピーエンドなんで!! そういうことにしておいてください!!
では,「長くてもばっちこーい!!」な方,下のリンクをクリックしておすすみ下さい。
「えー,めんどくさーい」という方,連載小説は短いのでどうぞそちらへおすすみ下さい。
駄文ではありますが,我がブログの二周年(二ヶ月も遅れましたが)を記念して。
一時の夢を,楽しんできてください。

